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テスト自動化の落とし穴とは?(後編)

菅野 広幸

2017.08.18

前回は、テスト自動化ツールを導入する際によくみられる失敗事例をお話しました。
前回コラム<テスト自動化の落とし穴とは?(前編)

今回は、前回のコラムで予告した通り「テスト自動化」の落とし穴に嵌まらない方法をご紹介します。

それでは、工程毎に確認していきましょう。

 

<テスト自動化ツール導入前>

落とし穴:テスト自動化ツールは夢の万能ツールではない

テスト自動化ツールを導入すればテストにまつわる課題がすべて解決されると思い、ツールの特性や効果的な適用箇所の検討もしないまま導入することは厳禁です。

思い通りに使いこなせず、「このツールは使えない」とすぐに見切ってしまう方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実際にはツールの特性や効果的な利用方法を理解しないまま適用してしまったか、目的を満たせない見当違いのツールを選択している可能性が高いです。

テスト自動化ツールは、テストを全自動でやってくれる夢のツールではありません。テスト「の」自動化なので、手動で実行できないテストは自動化できないのです。

 

<テスト自動化ツール導入初期>

落とし穴:テスト自動化は導入初期時にコストがかかる

テスト自動化ツールはあくまでも道具です。どんな道具も新しいものに慣れるには時間が掛かります。

テスト自動化ツールを導入する際は従来の手動のテストと比べると、ツールの設定やテスト担当者への教育、テストスクリプトの作成など、多くの準備作業が必要となります。

そのため、導入初期時のコストはかなり高くなります。初めて導入するツールの場合、作業の見積りとスケジュールには注意が必要です。

 

<テスト自動化ツール導入中期>

落とし穴:テスト自動化を広範囲に適用すると必ず失敗する

無影響テストなどの自動テストを繰り返し実行できるようになってくると、テスト担当者が勢いづいて、自動化の対象を広げようとしがちです。

テスト自動化で失敗する一番の原因はこの対象範囲を広げることではないでしょうか。

システム変更が発生した際など、自動化ツールで使用するテストスクリプトやデータは適宜メンテナンスが必要です。自動化の対象を広範囲に適用した場合、本来修正するシステムだけでなく、自動テストに必要なスクリプトなども改修範囲が広がるため、数年後にはメンテナンスが追いつかずに放り出すことになってしまうのは確実です。気合や勢いに任せて最初から広範囲に適用することを考えてはいけません。

 

<テスト自動化ツール導入後期>

落とし穴:テスト自動化は繰り返し実行し続けないとメリットはない

テスト自動化は繰り返し実行し続けることで初めてメリットが生まれます。つまり、テスト自動化の対象は何度も実行するテストに限定して適用すべきです。数回しか実行しないテストや自動化への対応コストが嵩むテストは費用対効果を考慮し、手動でテストすることをオススメします。

テスト自動化を成功させるコツは、自動化が一番効果的な範囲にまず限定して適用し、効果を確認しながら少しずつ範囲を拡張することです。

 

<テスト自動化完了後>

落とし穴:自動テストは実行されなくなった瞬間に負の遺産

テストスクリプトやテストデータは適宜メンテナンスされ、常に正常に実行できる状態を保ち続けることが重要です。

テスト担当者の異動やスクリプトの修正漏れなどにより、自動テストのテストサイクルが回らない状態になると一気に利用できなくなり、負の遺産として埋没していくケースが非常に多いです。そうならないためには、自動化すべき重要度の高いシナリオを厳選し、保守し続けていく必要があります。

 

テスト自動化ツールはあくまでも道具です。
利用者の理解度や適用範囲、活用方法によって効果も大きく変わります。ツールを使うこと自体を目的とせずに、本来の目的であるソフトウェアの品質向上を実現するための道具として有効活用することで「テスト自動化の落とし穴」に嵌る確率は限りなく小さくなるかと思います。

当社ではグループ会社間で開発分科会を定期的に開催し、開発ツールに関する情報交換や利用の推進、教育教材の作成などの活動を実施しています。また、品質向上に貢献すべくテスト自動化ツールについても効果的な活用を研究・推進中です。

著者プロフィール

菅野 広幸

法人事業本部 企画グループ リーダー

COBOL、VB、Javaなどを利用したさまざまなエンタープライズシステムの開発に従事してきました。その後、ミドル・インフラ・DBAも経験し、社内の技術支援を10年間実施しました。現在は過去の経験を活かし、開発部門の品質担当部署のリーダとして社員のスキル教育や意識改革、品質向上施策を推進中です。



※ 所属部署・役職は2021年3月以前のものです

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