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SAPシリコンバレー(Palo Alto Labs)訪問記2017

柳原 寛

2017.10.25

シリコンバレーにあるSAP社のPalo Alto Labsを訪問してきました。このラボはデザイン・シンキングを用いてSAP社自身が変革を遂げた場所であり、Co-Innovationと呼ばれるSAPユーザーとの共同イノベーションの場でもあります。今回の訪問は私にとって大変刺激になりましたので、こちらで見聞きしたものを皆様にもご紹介したいと思います。

SAP社の小松原氏と坪田氏のご好意により、前半30分の資料説明の後、後半30分で施設内を案内して頂きました。

まずは資料を使ってのご説明の中で、大変興味深いお話が聞けたのでご紹介したいと思います。

デザイン・シンキング

デザイン・シンキングはSAP社のハッソ会長がある論文を読み感銘を受け、論文の著者とともにスタンフォード大学のd.Schoolを設立したのが始まりだそうです。それからデザイン・シンキングの考え方をSAP社自身の中期計画を策定するために用いました。その後、自社の製品開発への適用、 ユーザーエクスペリエンス向上への適用などに活用し、現在ではお客様との共同イノベーション(Co-Innovation)を行っているそうです。これらの活動拠点がPalo Alto Labsであり、現在では4,000名が活動しています。この従業員数はシリコンバレーの企業としては13番目に大きく、米国以外の企業としては最大の人数で、外資系企業の成功例となっています。

デザイン・シンキングではいかに美しい課題を設定することができるかが鍵となります。発現している問題の事象のみに捕らわれず、本当に解決すべき課題が何かを徹底的に考える。それがデザイン・シンキングの基本的な考え方となります。そしてこのデザイン・シンキングは今ではシリコンバレーでのデファクトスタンダードとなっています。私がPlug And Playでスタートアップ企業のピッチ大会を見学した際も、皆さん真っ先に解決したい課題を説明していました。本当に当地ではデザイン・シンキングが浸透しているなと感じました。

SAP@シリコンバレー

SAP社は今ではHANAを中核としたERP以外の事業の方のウェイトが大きくなっています。当初HANAをドイツで立ち上げましたが、既存ERPビジネスとの軋轢でうまく行かず、組織的にも物理的にも分離してシリコンバレーをHANAビジネスの拠点とすることで、新しいビジネスを立ち上げることに成功したそうです。この話を聞くまではSAP社は大企業だからHANAのようなビジネスも簡単に立ち上がったのかと思っていましたが、大企業だからこそ、既存ビジネスが成功を収めているからこその困難があり、シリコンバレーのこの地を使って大転換を遂げたというのは驚きでした。またこの事実は多くの日本企業にも共通して非常に参考になる話だと感じました。

3つのP

またSAP社では3つのPを大切にしているそうです。
People(多国籍、ダイバーシティ)、Place(城下町(ドイツ)から離れる)、Process(デザイン・シンキングなどのフレームワーク)。そのうちPeopleに関して1つ大変興味深い話がありました。SAP社では例えば女性管理職比率をKPIとして持っていて、比率がどのくらい上がると利益にどのくらい影響があるかを分析し指標として持っているそうです。そのため売上に直接貢献する案件にその人を投入するのか、または管理職として登用する方が価値が高いのかを同等の価値基準としてとらえ、数字として比較して判断できるとのことです。どこの企業でもCSRの一環として女性管理職比率等の指標は捉えているでしょうが、私自身こういったものの考え方に初めて接し、大変感銘を受けました。

 

 

資料説明後、施設の案内をしていただきました。
ここでも面白いものがありましので、ご紹介したいと思います。

工夫されたオフィス環境

ミーティングスペース
わざとイスを高くして長時間の会議をしないように工夫されているそうです。

 

スケジュール表
レゴでできています。単なる遊び心ではなく、すぐに変更できるように・変化に対応できるように、といった意味が込められているそうです。

 

お客様とCo-Innovationを実践する場所
下の写真は2Fですが、ここで考えたものをすぐ下の1Fの工房でプロトタイプを作って試せるようになっています。

こちらでできたものの1つとして女子テニス協会と一緒に作った「コーチが試合中にゲームを分析するアプリケーション」があります。画面デザインはかっこいいものを追求するのではなく、コーチが強い日差しの中でも見やすいように工夫されているそうです。

 

 

以下は番外編として、SAP社のラボ以外で関連するところも訪問してきましたので、ご紹介します。

こちらはスタンフォード大学のd.Schoolです。デザイン・シンキング発祥の地です。

1学期のプロジェクトとして各部の学生が集まって、与えられた課題に対してデザイン・シンキングを実践するそうです。中では学生が何人かディスカッションしていました。付箋がいっぱい貼ってあってまさにデザイン・シンキングという感じです。ちなみにスタンフォード大学は広大で、どこにd.Schoolがあるか分からないのではないかと心配していたのですが、ちゃんとGoogleMapに出ていました。

そして最後にご紹介するのは、Palo AltoのダウンタウンにあるHana Haus。SAP社が作ったCafé&Co-Working Spaceです。一般の人々が入りやすくオープンな環境でコラボレーションができるように、あえてSAPという名前は出していないそうです。

 

今回、SAP社小松原氏、坪田氏には大変貴重なお時間を割いていただきましたこと、この場を借りて深くお礼申し上げます。SAP Palo Alto Labsにはこれまでに2,500名、昨年は1,300名の日本人が訪問されているそうです。実際に見て、聞いてその人気の理由が良くわかりました。

著者プロフィール

柳原 寛

法人事業本部 ビジネスソリューション第2部 部長

ERP会計コンサルタントとして、電力、通信、不動産、金融など多岐に渡るお客様へERPを導入してきました。現在はERP部門のマネージャとして、OracleEBS、SAP、Biz∫(ビズインテグラル)といったERPと様々な周辺システムを組み合わせた会計トータルソリューションをお客様へ提供しております。



※ 所属部署・役職は2021年3月以前のものです

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