CASE STUDY
ケーススタディ
BPO
高度な専門スキルを
必要としてきた
マップメンテナンス業務の
中国BPOを実現
大阪ガス株式会社様
INTERVIEW
業務フロー、ルールの可視化・定量化・標準化を支援
大阪ガス様では、ガス導管図面のメンテナンス業務に高い専門スキルを持った人材を投入してきた。熟練工の専門スキル・ノウハウおよび品質を、さくら情報システムのノウハウで可視化・標準化し、2010年10月からガス導管に関する地図情報システムの管理・運営(BPO)を中国で開始。
マップメンテナンスの中国BPOを決定
作業工程を全て見直し、
業務マニュアルとルールを作成
出射様
さくら情報システムさんのアドバイスに従い、最初に行ったのがマップメンテナンスの業務フロー、ルールを詳細に策定することでした。従来のマップメンテナンスの作業では、高い専門スキルを持つ個人個人のやりかたに任せている部分があったので、全ての作業を明らかにし、可視化・定量化・標準化していかなければなりません。そこで、ガス管工事情報を反映してマップを更新するという作業の全てをビデオで撮影し、各工程を事細かに書き出していきました。登録作業自体は70~90分ほどですが、最終的に完成したマニュアルは100ページ以上にもおよび、半年もの期間を要しました。
しかし、マニュアル策定によってマップメンテナンスの業務自体を体系化することで、無駄をなくし、業務の効率化を実現することができました。それまでは20年、30年の経験を積んだ熟練者しかできなかった業務を、新しい人材でもできるようにしたということは将来的にも有益なことです。また、業務フローの中に1つ1つの工程を管理できる仕組みを設け、各工程の作業をチェック。ミスが起こった際も、「どの段階」で「誰」により「どのように」起こったミスなのかを明確にすることができ、日本で行っている業務と同様の品質を担保できるようになりました。
文化の違いを踏まえた人材育成が成功のカギ
大原様
今回のBPO成功のカギともいえるのが、作業を行う中国人スタッフの育成でした。リーダーには日本語ができる人材を起用。彼らには4月に約1カ月、7月に約1カ月の計2カ月をかけて日本で研修を行い、日本のインフラや実際の作業について徹底して学んでもらいました。マップを作る上では、日本では当然だと思っていることが必ずしもそうではないという前提で彼らと接する必要があります。たとえば、ガードレールを知らない方もいるので、ガードレールとは何かを理解してもらわなければならないのです。
その後、中国に帰国したリーダーに現地採用した35名のスタッフが加わり、約6カ月間徹底したトレーニングを行いました。後から加わったスタッフの中には日本語ができない人もいたので、専門用語や地図を読むのに必要な地名や用語などの日本語教育を実施。作業に関しては日本とネットワーク接続した仮想環境を構築して、現実と同じような環境で繰り返しトレーニングを行いました。
中国人スタッフと関わる上で私たちが大切にしたことは、1つ1つの作業の意味をきちんと理解してもらうことと対等な立場のビジネスパートナーであるという意識をもってもらうことでした。
大阪ガスには「Know Why(なぜなのかを知る)」が大事という意識があります。単に作業を教え込むのではなく、それぞれの作業や表示の「意味」を知っていれば、その作業の大切さがわかる。そうやって長年にわたって保安を担保してきたのです。また、ビジネスパートナーであるという意識を持つことは、より良い提案がなされることにつながります。お陰で、最近では中国人スタッフから「この作業はこのようにしてはどうか」といった改善提案がされるまでになりました。
作業の効率化だけでなく、将来的な収益の可能性も
狭間様
今回のBPOは2010年10月に本格スタートしたばかりですが、ノーミスでの作業達成率は99%以上と、日本とほぼ同様の数字が出ています。作業の効率化や標準化に繋がりましたし、コストの面でも3年以内に回収し、年間で7千万円ほどのコストダウンを実現する見通しです。稼働するまでの準備期間には「ここまで細かなマニュアルやルールが本当に必要なのか」と思うこともありましたが、さくら情報システムさんの分析とアドバイスに従い、徹底した準備を行ったことがプロジェクトを成功に導いた要因だと思います。
将来的には、マップメンテナンス以外の業務のBPO、さらには他のガス会社からの受託など、マップメンテナンス事業を収益事業に転換する可能性も出てきました。現在はまだ足下を固める段階ですが、これからも今まで以上のBPO拡大を目指して、さくら情報システムさんにはご協力いただければと思っています。
十分な分析を行い、業務改善に繋がるBPOをご提案
今回ご紹介した事例では、属人化した高度な専門スキルをいかに正確に中国人スタッフに移植し、中国BPOならではのコストメリットを出せるかがポイントでした。そのための業務フロー・ルール作り(可視化・定量化・標準化)の部分をお手伝いさせていただき感謝しています。
当社のBPOサービスでは、お客様とアウトソーシング先双方について十分に分析を行い、お客様も気付かない課題などをご提案してきました。そこに業務改善を実現するシステム提案を付加するなど、これまでに培った豊富な経験と高いスキルにより、お客様の一層の業務効率化のお手伝いをしていきます。
取材協力
大阪ガス株式会社 様
1897年(明治30年)設立。都市ガスの製造・供給・販売をメインに、LPGの供給・販売、電力の発電・供給・販売等を行う。グローバルなエネルギー・環境企業グループとして一層の発展を目指し、100年を超えて培ってきた事業基盤、人材、技術、ノウハウを活かしつつ、環境に配慮した快適な暮らしを提供している。
- 導管事業部
計画部
計画チーム
マネジャー
狭間 一郎様 - 導管事業部
計画部
計画チーム
マップメンテセンター長
大原 康様 - 導管事業部
計画部
計画チーム
係長
出射 直毅様
さくら情報システム 担当者
- コソーシング本部
企画グループ
渡辺 照雄 - コソーシング本部
BPO部
部長
河村 優司 - 営業本部
BPO営業部
部長代理
三浦 俊朗
※ 掲載内容、法人名、所属部署、肩書きなどは 取材当時のものです。
狭間様
大阪ガス株式会社では、近畿地方2府4県にまたがる110以上の自治体の地下に、総延長6万kmのガス導管を埋設しています。これらの導管の地下埋設状況を示した図面(以下、導管マップ)は、日々行われるガス管工事の度にメンテナンスが加えられて、常に最新の状態で社内外に提供されています。
しかし、これまで導管マップの登録・整備に関しては、当社の5つの拠点で行われており、細かな業務フローや評価の仕組みなどが十分に整理されているとは言えませんでした。 そこで、まずは平成15年から19年にかけて、5つの拠点をマップメンテナンスセンター1拠点に集約。さらに、センターでの作業を効率化するため、中国へBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)することを2009年に決めました。
BPOを受託したのは、大阪ガスグループのオージス総研とオージス総研グループの上海欧計斯軟件有限公司(SOT)です。そして、オージス総研から同グループ会社でBPO経験の豊富なさくら情報システムさんを紹介していただき、高度な専門スキルを必要とするマップメンテナンス事業をどのように定量化・可視化すればよいか、お手伝いしていただくことになりました。