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COLUMN

BizTechコラム

ITアーキテクト育成

ITアーキテクトの育て方

森 隆彦

2016.09.06

ITアーキテクトに限った話ではありませんが、プロフェッショナルの育成は難しいものです。
極論ですが、「ITアーキテクトは徒弟制度の中でしか育成できない。」「ITアーキテクトは勝手に育つものだ。」などの意見もよく耳にします。
そこで今回は、ITアーキテクトをいかに組織的に育成するのか、その取り組みについて紹介します。


「IT アーキテクト 育成ハンドブック 第2版」の指針と問題点

IPAが公開している「IT アーキテクト 育成ハンドブック 第2版」中のITアーキテクト育成方法に関する指針では、次の5点が示されています。

・研修の体系化と実施
・メンタリング/コーチング
・ジョブアサイン
・コミュニティ
・認定制度

この育成ハンドブックはとてもよく整理されており、ITアーキテクト育成のための沢山のヒントが書かれています。
この指針に則り、「研修の体系化と実施」で基礎知識をしっかり学び、「ジョブアサイン」された実プロジェクトを通して得られた経験を「メンタリング/コーチング」によって強化し、それと並行して「コミュニティ」活動を通して知見を広めることで、「認定制度」に合格してITアーキテクトになることができるでしょう。
しかし、問題点もあります。それは、一人前のITアーキテクトを名乗ることができるまでに、かなりの時間を要する点です。


知識と実践力を鍛えるコミュニティ

当社では、2015年度の自社コミュニティの試みとして、1年という限られた期間内での活動を通してITアーキテクトに必要な知識と実践力を効率的に習得するための活動を行いました。
これは過去5年間に試行錯誤しながら実施したITアーキテクト育成活動の集大成です。
その特徴は以下の通りです。

・月2回、各2時間、全21回の活動
・体系的かつ幅広な講義による知識向上
・グループワークによる知識の定着と応用力の向上
・ケースメソッドによる実践力、意思決定能力の向上


『ITアーキテクト体験ひろば』全21回のAgenda

 全21回のAgendaは下記の通りですが、ご覧になってどんな感想を持たれたでしょうか?
・第1回 キックオフ(自己紹介、ITアーキテクトとは?、懇親会)
・第2回 企業ビジョンを知ろう(アイディア創出、ビジネスモデリング)
・第3回 ビジネスアイデアを伝える(エレベータピッチ、KPTによる振り返り)
・第4回 ペルソナを用いた要求開発(ビジネスモデルを鍛える)
・第5回 事業計画の概要を知ろう(システム化計画概要、RFP作成)
・第6回 RFP発表会(RFP説明会疑似体験、質疑応答会)
・第7回 提案書を作ろう(提案骨子作成、提案書作成)
・第8回 提案プレゼンの準備(プレゼン講習、プレゼン準備)
・第9回 提案プレゼン大会(提案プレゼン実施、中間打ち上げ)
・第10回 プロジェクト発足(マルチタスクゲーム、チームビルディング)
・第11回 要件定義(前半)(ユースケース作成、クラス図作成)
・第12回 要件定義(後半)(品質特性シナリオの抽出)
・第13回 基本設計(第1回)(ADD、システムアーキテクチャ設計)
・第14回 基本設計(第2回)(システムアーキテクチャ設計)
・第15回 基本設計(第3回)(ATAM、システムアーキテクチャ評価)
・第16回 基本設計(第4回)(インフラ/アプリケーションアーキテクチャ設計)
・第17回 基本設計(第5回)(アーキテクチャ検証、検証項目のブラッシュアップ)
・第18回 開発(開発におけるITアーキテクトの責務、開発計画策定)
・第19回 テスト(ケースメソッド概要、ケースメソッド(テスト))
・第20回 移行/運用(ケースメソッド(移行)、ケースメソッド(運用))
・第21回 1年の振返り(KPT、打ち上げ)

このAgendaをご覧になって、「力の入れ所がITアーキテクト視点ではないのでは?」
「ウォータフォールは古すぎるのでは?」と思われた方もいらっしゃるでしょう。
しかし、1年間という制約の中で、効率的にITアーキテクトとしての知識と実践力を高める手助けとなったと私は信じています。

次回より、このカリキュラムの内容について紹介して行きたいと思います。

著者プロフィール

森 隆彦

技術開発部 統括部長

お客さまのビジネスに貢献するITサービスの提供を、ITアーキテクトとして戦略的情報化企画から開発、運用まで、幅広くアシストします。エネルギー系企業や金融系企業などのシステム構築経験をバックボーンに、高可用性が求められるシステム開発における非機能要件定義やデータモデリング、パフォーマンスチューニングを得意としています。また、社内外のITアーキテクトコミュニティの運営にも携わり、ITアーキテクト職の啓発および後進の育成を推進しています。



※ 所属部署・役職は2021年3月以前のものです

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