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テスト自動化の落とし穴とは?(前編)

菅野 広幸

2017.03.14

みなさんは「テスト自動化」と聞いて何をイメージしますか?

テスト自動化とは支援ツールなどを利用し、ソフトウェアのテストを自動化することです。自動化の対象は多様ですが、今回は当社で活用/推進している「キャプチャリプレイツール」によるテスト自動化を前編・後編に分けてご紹介します。

「キャプチャリプレイツール」とは、テスト担当者がGUIで行った操作をツールが記録し、記録した操作を再生することができるツールです。例えば、ショッピングサイトをテストする場合、1.IDとパスワードを入力してログイン、2.特定の商品をカートに入れる、3.購入してログアウト、という一連の操作を記録することで、同じ操作を何度でも繰り返し再生・実行することができます。

近年、ユーザ環境はスマホやタブレットの普及に加え、ブラウザの多様化も進んでいます。アプリケーションも複雑化し、機能の追加によって他の機能に影響が出るケースもあります。本来、開発者はすべての環境で同じテストを行う必要がありますが、さまざまな環境やテストケースの確認には多くの手間と時間が必要です。このように同じテストを繰り返し実行する際に最適なツールが「キャプチャリプレイツール」です。「そんな便利なツールであれば、すぐに全業務に導入しよう」と思うかもしれませんが、「テスト自動化」は万能ではありません。

以下に、テスト自動化ツールを導入する際によくあるケースをご紹介します。

<テスト自動化ツール導入前>
テスト担当者1:「毎月同じテストを繰り返し実行するのは大変だな。」
テスト担当者2:「テストが必要な環境もいくつもあるのに納期に間に合わない。どうしようか。」
テスト担当者1:「先輩、テストを劇的に自動化するツール『自動化なんでもおまかせクン(※)』が新発売されるそうです!」
テスト担当者2:「念願だった自動化ツールが発売されるのか!価格は高いが、すぐに元は取れるだろう。早速導入だ!」

<テスト自動化ツール導入初期>
テスト担当者1:「コツを掴むまでツールの使い方を覚える必要があるなぁ。」
テスト担当者2:「だいぶツールの仕組みはわかったが、いろいろな工夫が必要だ。」

<テスト自動化ツール導入中期>
テスト担当者1:「いい感じにようやく動かせるようになってきたぞ。」
テスト担当者2:「すぐにでも全部のテストシナリオを自動化しよう。」

<テスト自動化ツール導入後期>
テスト担当者1:「き、厳しい・・・、全てのテストを自動化するのがこんなに大変だったとは・・」
テスト担当者2:「しかし全ての自動化ができればこれからのテストは楽になるんだ。気合だ!気合!やるぞー!」

<テスト自動化完了後>
テスト担当者1:「ふぅ。みんなの協力を得て、なんとか全てのテストが自動化できた!」
テスト担当者2:「これでテスト工数は劇的に下がって、みんなハッピーになるね!やったー!」

しかし、喜んだのも束の間。

テスト担当者達の上司:「テストの自動化が完成したそうだな。よくやった!」「じゃもうテストに人は不要だから、君達は明日から○○部に異動ね。よろしく~」
テスト担当者達:「えっ!?急に異動ですか?」
テスト担当者1:「テスト自動化のノウハウを誰かに引き継がなきゃ・・えっ!?そんな時間はない?」
テスト担当者2:「そんなぁ・・・じゃ残された人達、気合でがんばって~・・・」

と、テスト自動化のノウハウは誰にも引き継がれずに、テスト担当者達は別の部署に異動していくのでありました。
さて、残された開発者達。

開発者A:「テスト担当者達、なんか大量に残していったなー。」
開発者B:「説明も引継ぎも無いしよく分からないね。しょうがない。そっとしておこう・・。」
開発者達:「うん、そうしよう・・。」

こうして時間をかけて作成したテスト自動化の仕組みはお蔵入りとなりました。残された人達は、また手動でテストをする時代に逆戻りです。そうして、しばらく経過した後にこうつぶやくのです。

テスト担当者3:「なんかテスト面倒だな。どうにか効率化しないと。」

テスト自動化の失敗事例としてよくある光景です。実はこの会話の中に、「テスト自動化の落とし穴」が多く隠れています。何に気をつける必要があったのでしょうか。

次回は「テスト自動化の落とし穴」に嵌まらない方法をご紹介します。

  • ※ 架空の名称です。

著者プロフィール

菅野 広幸

法人事業本部 企画グループ リーダー

COBOL、VB、Javaなどを利用したさまざまなエンタープライズシステムの開発に従事してきました。その後、ミドル・インフラ・DBAも経験し、社内の技術支援を10年間実施しました。現在は過去の経験を活かし、開発部門の品質担当部署のリーダとして社員のスキル教育や意識改革、品質向上施策を推進中です。



※ 所属部署・役職は2021年3月以前のものです

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