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COLUMN

会計コラム

ERP

ERPとIT人材不足

柳原 寛

2018.08.17

当社はERPビジネスを展開していますが、最近は人材不足が一番の課題となっています。
今回はERP/IT人材不足の原因とその対応策について考えてみました。

IT人材不足と高齢化

そもそもこの人材不足はERPだけに限ったことではなく、IT業界全体で言えることです。経済産業省の調査結果(※)によると2015年時点で既に約17万人のIT人材が不足していたのが、2030年には約59万人まで拡大するとの推計があります。この調査によるIT人材不足の理由を要約すると以下の通りです。

●ITニーズの高まり
短期的には大型のIT投資の継続、セキュリティニーズの高まり。中期的にはビッグデータ、IoT、AIなど先端IT技術の登場による新しいIT活用ニーズの高まり。これらによりIT人材へのニーズが高まっている。

●IT人材の減少
人口減少を背景に2019年度にはIT業界からの退職者がIT業界への入職者を上回りIT人材は減少していく。また平均年齢は2019年の39.9歳から2030年には41.2歳と上昇する。

最近ではさまざまな分野でIT化が進んでいます。かつてITは人の仕事を代替する業務効率化のためのツールでしかありませんでしたが、GoogleやAmazonなどに代表されるプラットフォーマーと呼ばれる企業では、ITそのものがビジネスの根幹となってきています。
このような潮流は多くの産業に波及し、例えば金融業ではFinTechへの取組みなどITを駆使して新しいサービスを構築することが多くの産業で課題となっております。こうした理由から、ユーザー企業自身でもIT人材を抱える傾向が強くなっており、IT業界全体の人材不足に繋がっていると感じます。

またIT人材の高齢化も肌で感じます。私の所属するERP業界でも高齢化は顕著です。SAPやOracleEBSが日本で導入され始めたのが今から約20年前のことで、その当時、若手SEを大量にERP技術者として育成しました。(私もその1人です。)
それからERP需要の落ち込みを幾度か迎えたため、業界全体で若手の人材を十分に育成しきれずに今日を迎えています。その結果20年前当時の若手SEが現在40代、50代で今でも主力メンバーとして活躍している構図になっており、ERP業界全体の人材不足に繋がっています。

またERP人材の不足にはもう一つERP業界固有の要因もあります。いわゆるSAPの2025年問題です。
SAP社の「SAP ERP」は2025年にサポートを終了します。「SAP ERP」ユーザーは2025年までに最新バージョンの「S/4 HANA」に移行するか、他社製品に乗り換えるか決めなければなりません。2025年まであと7年ほどですが、この動きは少しずつ始まっています。元々SAPの保守料が高いと感じていたお客様がこれを機に他社製品に乗り換えるニーズが増えてきています。またこれとは逆に他社製品から最新バージョンの「S/4HANA」へ乗り換えるニーズも同時に増えています。今後「SAP ERP」から「S/4HANA」への移行が本格化するとますますERP人材ニーズが高まり人材不足が加速するでしょう。

IT人材不足への対応策

IT人材不足への対応策として、シニア人材の活用と海外IT人材の活用の2つの策が考えられます。

1つ目のシニア人材の活用について掘り下げていきます。
前述のようにIT人材は高齢化が進んでいます。しかし皆さんまだまだ元気で働ける人が多いのではないでしょうか?
高年齢者雇用安定法により企業は
1、65歳までの定年の引上げ
2、65歳までの継続雇用制度の導入
3、定年の廃止
のいずれかの実施が義務付けられています。また同法の改正により平成25年から2の継続雇用制度については原則、希望者全員が対象となりました。(それまでは、企業が対象者を限定できた。)

実質的に2の継続雇用制度を採択し、嘱託・契約社員としての再雇用制度を設けている企業が多いようです。この場合、処遇面等の労働条件は個別の契約となりますので、継続希望しても労働条件で折り合わなければ再雇用に至らないこともあります。

システム開発の現場では50代のSEは珍しくなくなってきましたが、さすがに60代となると、まだまだあまり見られません。上記のように法制度としてはシニア活用の下地が整ってきてはいるものの、まだまだIT人材不足に対する積極的な対策として活用しきれていないのが現状ではないでしょうか?

しかし前述した通り、IT人材は益々高齢化が進んでいきます。今後は企業側も単なる法令対応ではなく、積極的にシニア人材を活用する工夫・仕組み作りが必要になってくると思います。またシニア層もポジションなどに捉われない、意識改革、社会風土の醸成も必要になっていきます。

IT人材不足への対応策の2つ目は海外IT人材の活用です。
私も海外に活路を見出すことが重要と考え、これまでに中国、ベトナム、フィリピンのオフショア先の視察に行ってきました。中国は上海などの沿岸部のオフショア価格が高騰し、オフショア先としては内陸部に移行しています。またベトナムやフィリピンも親日のオフショア先として人気が出ています。しかしどこも人気が出れば出るほど、現地での給与水準は上がって行きますので、今は良くとも将来的にはコストメリットは薄れていきます。

さらに現在の国内IT人材不足の状況を考えると、オフショア先を単純なコストメリットとしてだけ考えることはできなくなっています。国内のIT人材を確保することが物理的に難しくなってきている現状では、海外のIT人材を活用することは必然とも考えます。各国のオフショア先もそれは十分理解しており、単なる開発業務だけでなく、ERPなど特色のある開発技術の習得、先端技術の研究開発などの差別化を図ってきています。

問題はこうして力をつけているオフショア先が果たして今後も日本を選んでくれるのか?
ということだと感じます。海外の技術者から見れば米国の方が英語でコミュニケーションできる、先端技術が学べるといった理由から人気があります。

国内IT人材不足の対応策には海外に活路を見出すことは避けて通れませんが、一方で我々の方も海外の人材に選ばれるような魅力ある企業作りが必要となっていきます。

著者プロフィール

柳原 寛

法人事業本部 ビジネスソリューション第2部 部長

ERP会計コンサルタントとして、電力、通信、不動産、金融など多岐に渡るお客様へERPを導入してきました。現在はERP部門のマネージャとして、OracleEBS、SAP、Biz∫(ビズインテグラル)といったERPと様々な周辺システムを組み合わせた会計トータルソリューションをお客様へ提供しております。



※ 所属部署・役職は2021年3月以前のものです

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