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COLUMN

BizTechコラム

ITアーキテクト概要

クラウド時代に求められる、運用に強いITアーキテクトの役割

森 隆彦

2016.08.02

ITアーキテクトという職種が認められるようになってから10年以上経ちますが、未だにITアーキテクトの役割とは?という議論が続いています。これは、ITアーキテクトに対するイメージや求められる期待が多様であるためと考えています。

そこで、ITアーキテクトの役割について、自身の知見や社内外のコミュニティ活動から得られた経験に基づいて、個人的な想いも込めて整理してみました。


ITアーキテクトの役割定義

少し長いですが、ITアーキテクトの役割を一文にまとめてみました。
「ビジネスとITの両視点から、実現可能かつ品質を保ったシステムを設計し、関係者へ説明する役割」

もう少し詳しい定義がITスキル標準(ITSS)に示されていますが、その中からポイントを整理すると次の5点となります。

・ビジネス及びIT上の課題を分析し、情報システム化要件として再構成する
・お客さまのビジネス戦略を実現するために、ハードウェアおよびソフトウェア関連技術を活用し、情報システム全体の品質を保ったITアーキテクチャを設計する
・設計したアーキテクチャが課題を解決し、後続の開発や導入が可能であることを確認する
・ソリューションを構成するために、情報システムが満たすべき基準を明らかにする
・実現性に対する技術リスクについて事前に影響を評価する


ITアーキテクトは技術マニアではない

他職種やITアーキテクトを目指す若手から受ける大きな誤解の一つが、ITアーキテクトはIT技術を極めた偏屈な職人であるという見方です。同種の意見として、ITスペシャリストの上級職で、スキルレベルが高いだけで役割は同じだというものもあります。
上述した役割定義で示したように、ITアーキテクトはお客さまのビジネスを第一に考えなければならず、IT技術はその実現のための手段でしかありません。ただ、実現手段の選択肢は多岐に渡っているため、お客さまのビジネスの実現のために、より良い選択を行うためのスキルが求められます。


すべての利害関係者と会話できるマルチリンガル

沢山の丸と四角と矢印をつないだ図を使って、お客さまやマネージャーに対し、得意気に難解な説明を行うITアーキテクトは偽物です。本物のITアーキテクトには、以下のような相手の立場に応じた会話能力が求められています。

・お客さまに対し、対象となる業務との関連をわかりやすい表現で説明する
・プロジェクトマネージャーに対し、技術リスクと影響を警告する
・データベーススペシャリストに対し、障害発生から復旧までのシナリオを伝える
・プログラマーに対し、より品質の高いコーディングをペアプログラミングで指導する


クラウド時代に求められる、運用に強いITアーキテクト

ITスキル標準(ITSS)では、ITアーキテクトの活動局面は戦略的情報化企画から開発までのフェーズと示されています。これまでのウォータフォール開発であれば妥当ですが、クラウド基盤を活用して継続的な高い価値提供が求められる今、運用フェーズもITアーキテクトの活動局面から外すことはできないでしょう。
企画した新しいサービスを迅速に開発するためのプラクティスとしてリーンやアジャイルが、開発したサービスを素早く運用に提供する仕掛けとしてDevOpsがあります。
では、運用で提供されているサービスの価値を高めるためにできることは何でしょうか。
お客さまのビジネス成功のために、無数の選択肢の中からより良いITサービスを提供し続ける仕組みを提案する役割。これがこれからのITアーキテクトに求められる役割だと思います。

著者プロフィール

森 隆彦

技術開発部 統括部長

お客さまのビジネスに貢献するITサービスの提供を、ITアーキテクトとして戦略的情報化企画から開発、運用まで、幅広くアシストします。エネルギー系企業や金融系企業などのシステム構築経験をバックボーンに、高可用性が求められるシステム開発における非機能要件定義やデータモデリング、パフォーマンスチューニングを得意としています。また、社内外のITアーキテクトコミュニティの運営にも携わり、ITアーキテクト職の啓発および後進の育成を推進しています。



※ 所属部署・役職は2021年3月以前のものです

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