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COLUMN

会計コラム

ERP

ERPの過去、現在、未来

柳原 寛

2016.09.13

ERPは過去の巨大化の時代を経て、一旦終焉を迎えるかに思えましたが、その後一転してスリム化の時代へ入り、依然として市場での存在感を示し続けています。そこで、ERPが過去から現在までどのように変化してきたのか、そしてビッグデータ時代を迎えたERPがこれからどのように変化してくのかを考察していきます。

1.過去「ERPの巨大化」
ERPは過去20年間、独SAP社や米Oracle社などの外資系パッケージベンダーが市場を牽引し、大企業を中心に導入されてきました。また、ERPはさまざまなユーザーのニーズに対応するために機能を次々と拡張し巨大化していきました。本来、ERPは標準機能のみを利用する前提で、トップダウンにより導入されるべきでしたが、日本においては現場の使い勝手が重視されたため、導入には膨大な追加開発や標準機能の改修が発生していました。その結果、導入から5年以上が経過すると、今度は更改やバージョンアップのために莫大な費用がかかるようになりました。加えて、毎年発生するライセンス保守料や維持費もユーザーの大きな負担となっていました。

2.現在「ERPのスリム化」
現在では過去の教訓を受け、ERPの全ての機能を導入するのではなく、標準装備の機能のみを選んで導入する「スリム化」が主流となっています。そしてそれ以外の機能については、他のパッケージやクラウドサービスの利用、スクラッチ開発などのさまざまな仕組みを組み合わせて使い、ユーザーの利便性を高めています。こうした流れには3つの背景があります。
1つ目はERPラインナップの充実です。過去のERPは外資系パッケージが中心で選択肢は非常に少ないものでした。しかし現在では国産ERPのラインナップが充実し、日本の商習慣に合った製品を「手軽に」「必要な機能のみ選択できるように」なりました。
2つ目は組み合わせるべき周辺システムの充実です。経費精算システムを例に考えてみますと、今では経費精算に特化したパッケージ製品が非常にたくさんあり、SaaS型のクラウドサービスも利用できます。
3つ目はSOAやEAIといったシステム間連携技術の進化です。これらの技術によりERPと周辺システムは疎結合で繋がりながら、あたかも一つのシステムのような連携がとれるようになりました。当社でもこのような背景を受け、SAP,Oracleに加え、SOA基盤の国産パッケージであるBiz∫(ビズインテグラル)をラインナップに加えています。

3.未来「ERPのビッグデータ化」
過去の巨大化したERPは現在ではスリム化しましたが、未来のERPは再び巨大化へ向かっています。ただしこれはかつてのような機能の巨大化ではなく、ビッグデータを活用したデータの巨大化です。これまでのERP導入はどちらかというと最終的に財務会計を行うことに主眼が置かれていました。そしてより細かいメッシュでの視点が必要な管理会計、経営分析等はデータウェアハウスやBIツールを組み合わせた別の仕組みを設けるというケースが多かったと思います。これは管理会計や経営分析で使用する明細数は膨大でマシンパワーを要するため、別途仕組みを設けるというのが常識だったからです。しかしビッグデータを扱う技術の進歩によりこの常識は崩れています。また会計制度面でいうと、IFRSでは管理会計的な要素での報告が求められるなど、業務的にも財務会計と管理会計との距離は縮まっています。既に、SAP社からはS/4HANAという「高速データベース上ですべての明細データを処理しアウトプットする」というコンセプトの製品が発表されています。最近では、AIの技術を取り込んだERPというものも出てきています。ビッグデータ分析もAIも今では私たちがインターネットで買い物をする際に、身近に接してしている技術です。ERPにこれらの技術が取り込まれ、私たちがそれらをあたり前のように使う時代というのもそう遠くない未来と言えるでしょう。

 

 

  • ※ 記載されている会社名および商品・サービス名は、各社の登録商標または商標です。

著者プロフィール

柳原 寛

法人事業本部 ビジネスソリューション第2部 部長

ERP会計コンサルタントとして、電力、通信、不動産、金融など多岐に渡るお客様へERPを導入してきました。現在はERP部門のマネージャとして、OracleEBS、SAP、Biz∫(ビズインテグラル)といったERPと様々な周辺システムを組み合わせた会計トータルソリューションをお客様へ提供しております。



※ 所属部署・役職は2021年3月以前のものです

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