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COLUMN

人事コラム

社会保険の基礎

社会保険の中の「医療保険」について

下里 祐司

2018.07.13

前回は「社会保険」の広義と狭義や「労働保険」と「社会保険」の違いについてご紹介しました。
今回は狭義の「社会保険」の中の「医療保険」にフォーカスし、その変遷についてご説明します。

 

「医療保険」とは?

「医療保険」と聞くと民間の保険会社が販売している保険商品をイメージする人も少なくないようですが、「医療保険」には、健康保険や国民健康保険に代表される公的「医療保険」があります。
日本は「国民皆保険」といって、全ての国民が何らかの公的「医療保険」に加入することとなっています。
公的「医療保険」は国民誰もが一定の自己負担額で必要な医療が受けられることを目的に作られています。

 

医療保険」の種類

公的「医療保険」とは、どんな種類があり、どのような人がそれぞれの保険の対象となっているのかをご説明します。
皆様もこれらのどれかに加入されていると思います。

公的医療保険

種類 保険者(運営) 主な加入者
健康保険 全国健康保険協会 健康保険組合のない企業の従業員
健康保険組合 健康保険組合のある企業の従業員
共済組合 各共済組合 国家・地方公務員等
日本私立学校復興・共済事業団 私立学校教職員
船員保険 全国健康保険協会 船員
国民健康保険 都道府県(市区町村) 都道府県の区域内に住所を有する者
国民健康保険組合 同種の事業又は業務に従事する者で当該組合の地区内に住所を有する者
後期高齢者医療制度 後期高齢者医療広域連合 広域連合の区域内に住所を有する75歳以上の者

上表の上の3つ(健康保険・共済組合・船員保険)は被用者が主に加入する医療保険となっており、それ以外の人は基本的に国民健康保険に加入することとなります。

尚、75歳以上の人はそれまで加入していた保険から後期高齢者医療制度の対象に変更となります。

 

公的「医療保険」の変遷

なぜ公的な「医療保険」制度にも関わらず、このようにいくつもの種類があり、加入者も異なるのでしょうか。
それは公的「医療保険」制度が「国民皆保険」になるまでの変遷に関係しています。

最初に登場した医療保険制度は「健康保険法」であり、当初は疾病保険と災害補償を兼ねた保険で、工場法や鉱業法が適用される事業場の労働者に適用されていました。(その後、労働者災害補償保険法の制定により、業務外の事故についてのみ保険給付が行われることとなりました。)

その後、農山漁村民を主な対象として「国民健康保険法」が制定されます。
当初は任意加入の医療保険となっていました。
同じ頃に、船員を主な対象とした「船員保険法」、後に、公務員や私立学校職員等を主な対象とした各「共済組合法」が制定されています。

更に、「国民健康保険法」は市区町村で国民健康保険事業の実施を義務付ける等の改正が行われ、任意加入から、他の公的保険に加入していない者を強制加入とする制度に変更され「国民皆保険」が実現されています。
このように「医療保険」制度は、加入者を被用者の職業種類の括りごとに拡大してきた背景を受けて幾つもの種類があることをご理解いただけたかと思います。

公的「医療保険」は現在でも幾つもの種類がありますが、「年金保険」は各独自制度から切り離され、統合される動きとなっています。
次回は「年金保険」に焦点を当て、その変遷をご紹介する予定です。

今後も不定期にコラムを掲載しますので、ご興味を持っていただけた方は、次回も是非ご覧ください。

著者プロフィール

下里 祐司

サービス事業本部 HRS第2部 部長

人事給与、社会保険、ITと複数の視点で業務改善からシステム導入、運用構築までをワンストップでサポートします。
IT技術をバックボーンに人事部経験や社会保険労務士の知識を活かした人事給与業務の業務改善、効率化、システム化を得意としています。



※ 所属部署・役職は2021年3月以前のものです

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