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COLUMN

人事コラム

人的資本経営

人的資本経営の取り組み方についてわかりやすく解説します

2023.07.11

この記事では人的資本経営を取り上げて社会的背景や目的、効果、注意点などをわかりやすく紹介します。

人的資本経営の基本的なトピックを把握できますので、人的資本経営に関係が深い人事部門、経営企画部、経営層の方には特に自分事として理解していただけるはずです。

このコラムの内容
人的資本経営とは何か
人的資本経営の効果と注意点
人的資本経営への取り組み方

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人的資本経営とは何か

人的資本経営とは、人が持つ能力やスキルを資本とみなして投資を行い、企業価値の向上を目指す経営手法です。目的は、人材への投資を通じて会社の成長力を高めることにあります。

人的資本と人的資源の違いについて説明します。
人的資源の場合、人材は消費の対象であり、人材に関する経費は「コスト」とみなされます。これに対し、人的資本では人材は資本ですので、人材に関連する経費も「投資」とみなされます。

人的資本経営が求められる社会的背景は二つあります。

第一にESG投資の活発化です。ESGとは「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス)」の頭文字を意味します。ESG投資では企業の持続可能性が重視され、人的資本経営を実践する企業は成長力を秘めているとして高い評価を受けます。

第二に少子高齢化による労働力不足です。社内の人材不足を補うために外部から人を採用するのは、生産年齢人口の減少もあり、今後ますます困難となります。このため、既存の人材への投資を強化する必要性が高まっています。


人的資本経営の効果と注意点

以下では人的資本経営の効果と注意点について、わかりやすく説明します。

人的資本経営の効果

人的資本経営を実践することで得られる効果は二つあります。
第一に企業の社会的な信用力向上です。人材への投資の強化は社会的な要請でもあり、企業イメージがアップします。人材確保が難しくなる中で、採用活動で選ばれる企業になるためのアピールにもなります。

第二に従業員のエンゲージメント向上です。エンゲージメントとは、社員と企業の結びつきを指す言葉で、その会社への「愛着」や「思い入れ」のことを言います。人的資本経営を通じて従業員の成長が促されることで、エンゲージメント強化に直結します。

人的資本経営の注意点

人的資本経営を効果的に推進するためには次の点に注意を要します。まず、会社としてどのような目標を目指すのか明確化して、全従業員に向けて公表することです。ビジョンが共有されなければ理想の実現は難しいため、慎重に実施するべきです。

次に、目標達成に向けた KPI(重要業績評価指標)の設定です。KPIは数値化可能な指標でなければならない点に注意が必要です。

人的資本経営のKPIの例としては、「特定のスキルの保有人数」や、サーベイなどによる「社員の組織に対する満足度」などが挙げられます。


人的資本経営への取り組み方

実際どのように取り組めばいいのかを知れば、人的資本への理解、わかりやすさも違ってくるでしょう。人的資本経営への取り組み方として以下の5つを取り上げます。

タレントマネジメントの取り組み

タレントマネジメントのためには人材ポートフォリオの作成が有効です。
人材ポートフォリオとは、社内の人材について、誰がどんな能力を持っていて、どの部署に配属されているかを明確化したものです。人材ポートフォリオをベースにして戦略人事の方針を決めていきます。具体的には、人材を適材適所に配置したり、教育を行ったりすることで、組織の価値を最大化していきます。 

リスキリングの推進

リスキリングとは、新たなスキルの学び直しです。
特にDX人材の不足は社会全体の問題でもあります。 既存の人材がリスキリングを通じてDXを担える人材に成長すれば、会社の価値向上につながるでしょう。
従業員自身が学びたいことを後押しするだけでなく、経営戦略に基づいた今後必要になるスキルを明示し、従業員が自社でキャリアアップできるスキルが何かを知れるようにすることも必要です。

採用活動や評価制度の見直し

会社の求める人材像を明確に定義して、これに即した採用活動や評価制度を実践します。 まず採用活動では人物面を重視して、価値観や考え方の適合性を判断します。
ここではSNSの活用やリファラル採用が有効です。
リファラル採用とは社員の知人や友人、取引先など、信頼のおける人物を紹介してもらい採用する手法のことを言います。

また、人的資本経営の根本は従業員のモチベーションです。
この点、評価制度が曖昧であると意欲の低下につながってしまいます。このため、 評価制度を見直して公平公正な制度を構築することが大切です。 具体的には、評価項目を明示したうえで、数値による客観的評価や評価根拠の提示を行います。 

私の知っている企業では、リスキリングと評価を連動させ、スキルの取得を評価項目に組み込んでいるケースがありました。モチベーションとスキルアップをうまく連動させた一例だと言えるでしょう。

定期的な振り返りと改善

具体的な施策を実施した後には検証を行います。その際はデータの集計やKPIの充足を確認して次回以降の改善を目指します。
振り返りは毎月の経営会議でも報告するなど定期的に行う必要があり、経営と人事部門の足並みを揃えた中長期的な視点でPDCAサイクルを回していくことが必要になっています。

情報開示で求められる項目

2023年より人的資本の情報開示が義務化されました。対象は上場企業を中心に約4000社です。
コーポレートガバナンス・コードは、企業統治ガイドラインとなる原則・指針のことです。金融庁と東京証券取引所が合同で取りまとめ、2021年6月の改定により、人的資本に関する情報開示が迫られました。
2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードで開示が義務化される項目は以下の通りとなります。

第一にサステナビリティ(持続可能性)です。具体的な内容には「人材育成方針」と「社内環境整備方針」があります。ここでは人的資本を取り巻く社内の環境を総括して明示します。

第二に多様性を示す指標です。具体的な内容には「女性管理職比率」や「育児休業取得率」、「男女間賃金格差」、「人的資本や多様性に関する指標」があります。 ここでは現場の実勢に即した具体的な数値の表明が求められます。

第三にコーポレートガバナンスについての開示です。

そして「人的資本可視化指針」で開示が望ましいとされる事項も7分野19項目あります。7分野とは「人材育成」「従業員エンゲージメント」「流動性」「ダイバーシティ」「健康・安全」「労働慣行」「コンプライアンス」です。これらは人的資本に関する重要情報として任意的な開示が望まれます。

▶ 関連記事:タレントマネジメントの導入前、導入後の課題とは

企業に対する評価はこれまで財務上の指標が中心でした。ところが、人的資本経営はこれを一変させるインパクトを持ちます。更に、人材を投資対象と捉える点も画期的です。
このため、人的資本経営は、今後さらに広く普及することが見込まれます。

人的資本経営に取り組むうえで、人事部門との連携や効率化は避けて通れない課題です。
さくら情報システムの「HRAサービス(人事総合ソリューション)」は、人事業務全般の円滑な遂行を実現するワンストップサービスです。
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導入時の手厚いサポートやBPO(※1)、50年に亘る人事給与サービスにおける提供実績により、人事業務の効率化やコスト削減、コア業務への集中を加速し、全社の生産性向上を実現します。
導入実績や導入にかかる期間、費用などは、お気軽にお問い合わせください。
※1 BPO (Business Process Outsourcing):従来は企業で行っていた業務を外部事業者に委託することを指します。業務委託やアウトソーシングなどとも呼ばれます。

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上記の内容を参考にして、自社における人的資本経営の導入や強化に活かしてください。

監修者プロフィール
はやし総合支援事務所 代表
社会保険労務士・行政書士 林 雄次
大手システムインテグレーターでシステムエンジニアとして14年ほど勤務の後、行政書士・社会保険労務士の資格を取得し独立。ITと士業、両方の知見を活かした企業支援を提供しています。東京都社会保険労務士会「デジタル・IT化推進特別委員」。
社会保険労務士・行政書士はもちろん、中小企業診断士、情報処理安全確保支援士から潜水士、防災士まで360以上の資格を持つ資格ソムリエとしても活動しています。
事務所ホームページ:https://h-office.biz/ 

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